【疑問】効率を上げるための最適な環境・勉強場所とは?

勉強法一般

どこで勉強するのが良いのかというのは、多くの受験生の共通の悩みかもしれません。

つまり、「周囲が静かな方が良いのか」「勉強場所は固定したほうが良いのか」といった、勉強環境に関する疑問は大半の人がもっていると思います。

また、集中できる勉強場所を教えてほしい、という思いもあるでしょう。

そこで今回は、勉強にとってどんな環境が良いのかというのを脳科学の研究を踏まえて紹介し、最適な勉強環境・勉強場所を考えていくことにします。

音楽を聴きながら vs 静寂

音楽を聴きながら勉強するのが良いのか、逆に静かな場所の方が良いのか。

あなたも一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

この「周囲の音」が学習、特に記憶にどんな影響を与えるのかを調べた研究1)があります。

その研究は、アメリカの大学生54人を対象に行われました。

学生は3つのグループに分けられ、40個の単語を覚えさせられました。

このグループの分け方が肝です。Aグループはモーツァルトを聴きながら、Bグループはジャズを聴きながら、そしてCグループは静寂の中で単語を覚える状況が設定されていました。

そして後日、どれくらい覚えているかのテストが行われます。それぞれのグループをさらに3つずつに分け、「[モーツァルト]を聴きながら覚えて、[モーツァルト]を聴きながらテストを受ける」学生の集団、「[モーツァルト]を聴きながら覚えて、[ジャズ]を聴きながらテストを受ける」学生の集団、…というように、暗記とテストの環境の組み合わせが9つ作られました。

テスト
モーツァルト ジャズ 静寂
暗記 モーツァルト
ジャズ
静寂

結果は以下の通りです。

まず、「[ジャズ]を聴きながら覚えて[ジャズ]を聴きながらテスト」の集団の点数が、「[ジャズ]を聴きながら覚えて[モーツァルト]を聴きながらテスト」や「[ジャズ]を聴きながら覚えて[静寂]の中でテスト」の集団よりも2倍近く高く出ました。

モーツァルトを聴きながら覚えた集団でも同様の結果が得られました。

そして驚くべきことに、覚えたのと同じ条件下でテストを受けた集団の中で、「[静寂]の中で覚えて[静寂]の中でテスト」の集団の成績が最も悪かったのです!

 

これは次のように説明されます。

まず脳は学習する時、無意識のうちに周囲の音や景色といった情報も取り込んで、知識とそれをセットにして格納しています。

そのため、覚えた時と同じBGMのもとでテストを受けると、そのBGMが引き金となって知識を引っ張り出してくることができるのです。

逆に静寂の中で暗記をすると、一緒に紐づけて覚える周囲の情報が少なくなり、思い出すのに苦労するというわけです。

もちろんこれを我々が実践しようとしても、実際のテストの時に勉強時と同じ音楽をかけておくことはできませんから(笑)、100%この研究結果を応用するということはできないかもしれません。

しかし「静かな環境で勉強するのが絶対に良い」とは言い切れなくなってきました。

英語や国語の読解など言葉が耳に入ると集中が途切れてしまう勉強は別ですが、ある程度の周囲の音楽、雑音、会話は学習を促進させてくれるかもしれないという事実を見逃すべきではないでしょう。

これをもとにした結論は後の節で述べます。

勉強場所を固定 vs フラフラ移動

勉強場所は、「絶対に自分の部屋で!」などと決めた方が良いのでしょうか、それとも気ままに、自分の部屋→リビング→ソファ→…と場所を変えながら取り組んだ方が良いのでしょうか。

これに関しても、記憶に関する研究2)結果をご紹介しましょう。

まず、学生をA,Bの2グループに分けます。

学生には40個の単語を覚える時間が2回与えられました。

その覚える環境に、グループの違いがあります。Aグループは2回とも同じ部屋で、それに対してBグループは違う部屋で単語を暗記しました。

ちなみに部屋は、地下の雑然とした部屋と、庭の見える窓のあるきれいな部屋の2種類です。

1回目 2回目
Aグループの半分 地下 地下
Aグループの半分 地上 地上
Bグループの半分 地下 地上
Bグループの半分 地上 地下

暗記タイムが終了すると、全学生はごく普通の中立な部屋でテストを受けました。

 

結果はこれまた驚くべきものでした。

2回とも同じ部屋で暗記した学生は平均16個(40%)の単語を思い出しました。一方違う部屋で勉強した学生の平均は、約24個(61%)だったのです!

つまり違う場所で勉強した方が、数にして1.5倍も記憶量に差があったということです。

なぜこのような結果になるのかは分かっていませんが、前節で述べた「周囲の環境の記憶」が原因ではないかと考えられています。

2種類の部屋で覚えた方が同じ知識に付随する「環境の記憶」が多くなり、それだけ思い出しやすくなるのだろうというわけです。

従って、勉強場所は固定してしまうのではなく、色々な場所で勉強したほうが良いという結論になります。

ただし注意してほしいのは、この研究から分かるのは「同じ情報を覚えるのは違う場所が良い」という事実だけだということです。

つまり、例えば国語の勉強と数学の勉強が違う場所である必要性までは、この研究は主張していません。

この点についても次節で触れることにします。

結局、最適な勉強場所は?

私がオススメするのは、リビング+自宅のアチコチです。

実はこれは、私が実際に勉強していた場所です。

つまり、基本はリビングで勉強する、しかしそれに飽きたら自分の部屋に行ったりソファに座って暗記物に取り組んだりする、ということです。

東大生の8割以上はリビングで勉強していたというデータもあります。

この「リビング+自宅のアチコチ」は、上で述べた、音など周囲の情報があった方が記憶に残りやすいという研究結果と、違う場所で覚えた方が思い出せるという結果にも沿っています。

ただし後者については、日常的に勉強場所を変えていた方が同じ内容を学ぶときに違う場所で触れる確率が高まる、くらいに考えてください。

まずはこれが、私がこの勉強場所をオススメする理由です。

そしてそれに加えて、リビングでは他人の目があるという事実も見逃せません。

ここまで科学的な知見を並べておいてナンですが、勉強していなかったら家族にバレる、集中していなかったら家族に見つかる、という状況がやはり集中力を高めてくれるのではないかと思います。

もしも「テレビを見てしまって集中できない」というのであれば、テレビに背を向けて座れば良いのです。

それが物理的に難しければ、横に教科書をうず高く積んで視界を遮っても良いでしょう。

それに、多少の生活音は訓練になります

例えば試験当日、隣の人の貧乏ゆすりがどうにも気になってしまうかもしれません。

しかしそんな時でも集中力を発揮しなければならないのです。

そう考えると、普段から雑音のある所で勉強して集中力を鍛えておくというのも大切なのではないでしょうか。

まとめ

以上、最高の勉強環境について考えてきました。

しかし自分が集中できる場所だったらどこでも良いのではないかというのも、正直なところです。

ただ、それが分からなくて困っている人がこれを読んでくださっているのだと思うので、そういう意味でアドバイスをするなら「リビング+自宅のアチコチ」です。

ここで紹介したことをもとに、ぜひ自分にとってベストな勉強場所を見つけていってください!

出典

1) Steven M. Smith, “Background Music and Context-Dependent Memory,” American Journal of Psychology, Vol. 98, No. 4, Winter 1985, 591-603.

2) Steven M.Smith, Arthur Glenberg, and Robert A. Bjork, “Environmental Context and Human Memory,” Memory & Cognition, Vol. 6, No. 4, 1978, 342-53.

 

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

書き下ろしメールマガジン

Studiumメールマガジンでは、新着記事のお知らせや、会員限定コラムの配信などを行っています。

よかったら一度、登録してみてください!

Studiumと一緒に受験を走り抜けてみませんか?

東大院生が”受験の極意”を体系化!

 

このブログの全記事を執筆する吉田が、電子書籍を出版しました!

タイトルは、『受験生活を颯爽と走り抜けるための7つの知恵』。

多くの受験生に読んでいただけるよう、無料に設定してあります

興味がある方は、ぜひ手に取ってみてくださいね。

≫無料で手に入れる(Amazon)