【理科専用】ケアレスミスを減らす対策4選

以前こちらの記事で、ケアレスミスの原因と対策を紹介しました。
これは数学についてのものでしたが、今回は理科(物理・化学)に特化したミス対策を紹介します。
基本的なことは上の記事に書いてありますので、未読の方はまずそちらを読まれることをおすすめします。
では理科に特化したミス対策とはどんなものか。
それは、理科ならではの、物理量の文字計算(主に物理)と細かい数値計算(主に化学)をミスなくこなすための戦略です。
これらの計算は数学には無いものです。
その意味で「理科専用の」ミス対策を見ていきましょう。
[目次]
物理量の文字計算(主に物理)のミス対策
特に物理では、文字の計算を頻繁に行います。
K=(1/2)mv2、U=mghなどですね。
ここでは、文字計算の際の見直し術を紹介します。
極端な例を考える
これは、答えの式に現れるm,M(質量)やθ(角度)などに”極端な値”を代入してみて解の妥当性を確認する方法です。
例を見てみましょう。
角度θの斜面を滑り降りる質点の加速度aを求める問題。答えはa=gsinθ(g:重力加速度)ですね。
ではこの答えの中のθに 0°を代入してみましょう。
θ=0°とは水平な面なので、加速度は0のはず。そして実際に代入してみると、a=0が得られます。
ではθに90°を代入するとどうか。これは垂直な壁を表すので加速度はgのはずで、代入してみるとたしかにa=gが得られます。
ここで代入した結果が0でなかったりgでなかったりしたらどこかが間違っていると気付けるというわけです。
これが、極端な例で解の妥当性を確認する検算法です。
解の次元を考える
まず「次元を考える」とはどういうことか。
滅茶苦茶平たく言えば、それは「単位を考える」ということです。
理論的な説明よりも、例を見た方が分かりやすいし実践的です。
高さhの位置から物体を落とした時、地面での速さvはv=(2gh)1/2で与えられます。
この(2gh)1/2という式が妥当であるかを、単位を見て判断しようというわけです。
gの(代表的な)単位は m/s2 、hの単位は m です(「代表的な」と言っているのは、例えばhの単位としては cm や mm を使っても良いが、 m が代表的であるということです)。
数字に単位は無いので、数字(この場合は”2″)は無視します。
式の中のgを m/s2 に、hを m に置き換えて、単位を掛け算・割り算と見ます。すると、
となり、(2gh)1/2が速さの単位 m/s を持つことが分かりました。
このように、解を構成する一つ一つの文字の単位から式全体の単位を導くことを、「次元を考える」と呼びます。
理解を深めるために、もう一つ例を見てみましょう。
ばね定数kのばねにつながれて滑らかな水平面上で振動する質量mの物体の振動周期Tは、T=2π(m/k)1/2で与えられます。
mの単位は kg 、kの単位は N/m (フックの法則F=kxから簡単に分かります)なので、
となり、2π(m/k)1/2が時間の単位 s を持つことが分かりました。
ここで、N=kg m/s2はF=maを考えると分かります。
少し話が複雑になりました。要は、以下のことをすれば良いのです。
- 式の中の全ての文字を、その文字の単位で置き換える。
- 置き換えた式を計算する(N[ニュートン]等、複雑な単位は、F=maなど何らかの式を使って簡単な単位の組み合わせに直す)。
- 最終結果が欲しい単位になっているかを確認する。
これで、文字の約分のミスなどは大幅に防ぐことができます。
例えば、上の2番目の例でT=2π(k/m)1/2と分母分子を逆にしてしまった場合、右辺の単位は /s となって時間の単位にならないのです。
このようなチェックを是非してみてください。
<コラム>
ちなみに、ここで紹介した方法は「次元解析」と呼ばれる考え方を簡単にしたものです。
次元解析は物理量同士の関係が分からない時に非常に効果を発揮する考え方で、物理学の研究ではメジャーなアイデアです。
私の大学の先生の一人が、英国物理学会誌に掲載されたある論文の中に次元がおかしい式を発見して、論争を繰り広げたと言っていました。
それくらい物理学者はまず次元を気にします。
次元や次元解析について詳しく知りたい方は「次元解析」で検索してみると良いでしょう。
細かい数値計算(主に化学)のミス対策
化学では細かい数値計算が求められます。
それをいかにミスなくこなすかを考えていきましょう。
概算をする
これは桁のミスを防ぐのに有効です。
例えば、35.7×209.6という計算をするとしましょう。
この時、初めに35×100×2=3500×2=7000という概算をしておけば、748.272といった桁のミスが防げます(正しくは7482.72)。
又、桁だけでもパッと概算できるというのは、大学に入ってからも非常に役立つ能力です。
日頃から練習して、ぜひ身につけておきたいものです。
筆算のストレスを自覚する
「桁じゃなくて細かい数字でミスるんだよ!」というあなた。お待たせしました。
「筆算のストレスを自覚する」これが正確な計算をするためのコツです。
私が思う、筆算でミスをする最大の原因、それは筆算の繰り返しに対する(恐らく無自覚の)ストレスです。
問題を解くのに、2~3回ならまだしも、5回、6回と筆算を繰り返す羽目になると「また筆算かよ」と相当ストレスを感じているはずです。
それによって集中力や注意力が低下しミスにつながるのだと思われます。
そして重要なのは、そのことを自覚していない場合が多いということです。
少し余談になりますが、自覚しづらいのになぜお前はそのことを知っているのかと聞かれると、それは私が非筆算ユーザーだからです。
私は暗算八段という資格を有しており、3桁×3桁の計算が3秒以内にできてしまいます。
そんな私が「筆算を繰り返すとどうなるか」を考え、実際に自分で試してみて達した結論がこれなのです。
非常にストレスを感じました。
恐らく日常的に筆算をしている方は当たり前すぎて気付いていないポイントだと思います。
ではどう対策すれば良いかと言うと、まずは自分のイライラやストレスを自覚することです。
「自分は今ミスをしやすい状態かもしれない」ということに気付けないと、不意に横から飛んでくるサッカーボールに当たってしまうかのように、ミスにはまってしまいます。
サッカーボールが飛んでくることを知っていたら、避けられます。
「そろそろストレスが溜まっているかもしれない、疲れているかもしれない」と自覚することができれば、いつもより丁寧に計算したり、あるいは一旦深呼吸を入れたりするなどの対策が打てるかもしれません。
まとめ
以上の対策をまとめておきます。
- 物理量の文字計算(主に物理)のミス対策
- 極端な例を考える
- 解の次元を考える
- 細かい数値計算(主に化学)のミス対策
- 概算をする
- 筆算のストレスを自覚する
文字でも数値でも、理科の計算は煩雑でミスをしやすいものです。
しかしそんな計算ならではの検算法もあるのです。
自分の実力が100%点数に表れるように、是非今回紹介した方法を実践してみてください!